バイクとともに生き、
漫画という表現を通して数多くのバイク乗りたちの魂を描いてきた漫画家・東本昌平さん。
代表作『キリン』をはじめとする作品は、
単なる娯楽を超えて、生き方そのものを読者に提示するような力を持っていました。
その東本昌平さんが、2025年7月27日、自宅にてご家族に見守られながら亡くなられました。
死因は脳腫瘍でした。
ファンにとってはあまりにも突然の訃報でしたが、
実はその1年前から、病との闘いが静かに始まっていたのです。
この記事では、東本昌平さんが病と向き合いながらも創作を続けた1年を、時系列で振り返っていきます。
東本昌平が脳腫瘍と闘い続けた1年とは?
2024年7月:突然の活動休止
2024年7月、バイク雑誌『ミスター・バイクBG』を毎号読んでいた読者の間で、
ある異変が話題となりました。
誌面には「作者急病のため休載」とだけ記され、
代わりに過去作品やトリビュート作品が掲載されていました。
その頃、東本さんは以下のような手記を寄せておられました。
ハルモト入院してます。
道具持って入りましたが、病室では描けませんでした。
『雨はこれから』を楽しみにしてくださっていた皆さま、ごめんなさい。
しばらくお休み頂きます。
この段階では病名は明かされていませんでしたが、
その後の誌面で明らかになったのは、
脳腫瘍、特に「膠芽腫(こうがしゅ)」とみられる重い病気だったということです。
2024年夏〜秋:本人の筆で語られた病状
2024年8月頃、
東本昌平さんご本人が『ミスター・バイクBG』誌に寄稿された手記の中で、
自らの病状をファンに向けて明かされました。
その手記には、脳腫瘍を患っていること、
「休止」ではなく「最終回」とすることを選ばれた背景には、
病状の深刻さがうかがえました。
膠芽腫は、脳腫瘍の中でも非常に悪性度が高く、完治が難しい病気です。
ファンの中には、ご家族を同じ病で亡くされた方もおられ、
「これは本当に厳しい病気」と語る声も見られました。
2024年末〜2025年初頭:それでも、ペンを握り続けた
入院時に「道具を持って入った」と語られていたように、
病床でも漫画を描こうとされていた姿勢には、
漫画家としての責任感と、表現者としての強い覚悟が感じられました。
2025年8月7日、ご家族からのメッセージにも、
「最後までペンを握っておりました」という一文がありました。
生前は、多くの読者の皆さまに支えられ、オートバイに乗る事、絵を描く事を生涯楽しみ、最後までペンを握っておりました。
この一文は、まさに東本昌平さんの生き様そのものを象徴しているのではないでしょうか。
バイクを愛し、走ることの意味を問い続けた東本さんにとって、
2025年7月27日:静かな旅立ち
そして2025年7月27日、東本昌平さんはご家族に見守られながら、
葬儀はご本人の遺志により、
親族および親しい方々のみにて執り行われ、
ファンへの発表は8月7日、ご家族からの公式メッセージという形で行われました。
その文面の最後に記された
「すべてのバイク乗り、すべてのエンブレムに祝福を!」という言葉は、
東本昌平さんの人生と作品世界を見事に象徴する一文でした。
このフレーズは、今もなお多くのファンの心に深く刻まれています。
東本昌平・バイクと生きた漫画家の姿‼
『キリン』は、東本昌平さんの代表作であり、
多くのバイク乗りにとって“バイブル”と呼べるような作品です。
物語に登場するのは、社会に抗いながらも、
自分の信じた走りを貫く男たち。
その姿勢には、単なるスピードやアクションを超えた「信念」や「矜持」が描かれています。
かくいう筆者も、この作品に出会っていなければ、バイクを手放していたかもしれません。
今現在バイクに乗れていなくても、心にあの物語が残っている限り、
自分は「バイク乗り」でいられる
そう思わせてくれる作品でした。
東本昌平のプロフィール
- 生年月日・出身地
1955年(昭和30年)生まれ、東京都練馬区ご出身の漫画家・イラストレーターです。 - デビューと代表作
1982年に双葉社の『週刊漫画アクション』で「輪」にて漫画家デビューされました。 - 『キリン』について
『キリン』は1987年から2010年まで連載され、全39巻にまとめられています。 - 『キリン』について
2010年からは『キリン The Happy Ridder Speedway』として再スタートし、2016年までに全11巻で完結しました。 - その他の代表作・活動
2000年代には『ビッグコミックスペリオール』で『SS』、および『ビッグコミックスピリッツ』で『CB感。REBORN』の連載も手掛けられました。 - ムックの出版およびプロデュース活動
2007年に「東本昌平RIDE」というバイクムック誌を創刊し、自らプロデュースを行っています。 - イラストレーター・デザイナーとしての活動
漫画制作以外にも雑誌の表紙やポスター、製品パッケージのデザインなど、多方面で活躍されていました。 - メディア展開
代表作『キリン』は2012年に映画化されるなど、多くのファンに支持されました。
まとめ
東本昌平さんは、バイクに乗り、漫画を描き、
自身の生き様をそのまま作品に落とし込みながら、ひとつの時代を駆け抜けていかれました。
彼が描いたバイク乗りたちは、どんな困難にも負けず、自分の走りを貫いてきました。
そして彼自身もまた、病という大きな壁と闘いながら、
最後まで創作という「レース」を走り抜けたのです。
彼の旅立ちは、ファンにとってあまりにも早く、
受け入れがたいものかもしれません
しかし、彼の作品はこれからも残り続けます。
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